私は何度目になるかわからないくらい奥歯を噛んだ。
「……いいえ」
「じゃあ、なんであんな風に言ったんです?」
澪さんは退かずに問うてくる。
「……海雨を――ご当主様を、二度と死者の甦りなんかに関わらせたくなかったんです。澪さんは小路一派の人間です。海雨に何かあったとき、泰山府君祭を頼らないと言いきれますか?
……海雨の命は、普通の人間のものです。ですが、幼い頃は妖異が取り憑いていました。その破邪(はじゃ)のために私は海雨の傍に配置されていたんです。私が始祖の転生で、海雨がご当主様の転生だったから、私たち二人は近い場所にいたんです」
私が転生として覚醒したときに肌で感じたもう一つの始祖の転生の秘密。
始祖の転生は、始祖当主の転生のごく近くに生まれる。
私はあらかじめ、海雨の傍にいるようにさだめづけられていた。
「お嬢さんと海雨ちゃんは、友達になるように仕組まれていた、ってことですか……?」



