「大学のことで。実習あるから忙しくなるんだって」

「そういう。……兄貴、本当に医者になる気なのかな?」

架くんはやや天を仰ぎ気味に言った。

「古人さんはそうされたいみたいだよ。小埜家の黎への方針っていうか。医学部で特待取るくらいの頭だし」

「でもやる気ないよね」

「……うん」

否定出来なかった。

黎は医者になることは否定していないけど、黎がやりたいことを聞いたこともなかった。

……こういうところ、黎とのコミュニケーション不足を感じる。もっといっぱい黎を知っていたいのに。

そこではっとした。私は、自分のことも話していないことに気づいた。