いつも通り朗らかに声をかけてきたのは架くんだった。

その名にこめられた意味を、当人は最近理解し始めた。

「架くん、おはよう」

「おはよ。いつもより元気ないね?」

当たり前のように並ぶ架くん。

王子様然とした架くんへの注目のおかげで私まで衆目の的になっていたのだが――しかも斎陵学園の生徒ならほぼ知っている影小路姓だし――、架くん本人から、『真紅ちゃんは兄貴の彼女だから』と言ってくれたので、私と架くんの仲を邪推した嫌がらせは今のところ起きていない。感謝だ。

「そうかな? ママにもそれ、言われたよ」

「兄貴が見たら心配するよ?」

「黎とはしばらく逢えなくて……」

「なにかあったの?」