「なんで?」

「……黎、だけじゃない。誰にも、話せないことなの。紅緒様にも、黒ちゃんにも白ちゃんにも」

「……その面子(めんつ)ってことは、家の関係なのか?」

「――ごめん。これ以上は言えない」

「真紅の仕事のことなら踏み込みはしない。余所者が踏み入っていけないことは承知しているつもりだ。けど、

「これ以上は言わせないで!」

俺の言葉を遮って真紅が怒鳴った。さすがにそれには納得いかない。

「言わせるつもりじゃない! 言いたくないことなら言わなくていい!」

「ならなんで探るみたいなこと言うの⁉ 私しか知らないでいいことなんだよ!」