「黎ならたぶん、自分の部屋だと――

「澪さん、海雨に交際申し込んだって本当ですか?」

問うと、澪さんは瞬時に顔を紅くさせた。

「お、お嬢さん、それ誰から――

「駄目です」

「え……なんでお嬢さんにそんなこと――」

「絶対、ダメです。――海雨は私のお姫様だから、澪さんにはあげられません! 海雨は影小路と関係のない人じゃないと認めません! だから諦めてください!」

言うだけ言って、私は引き返した。

廊下でかち合った古人さんに「いきなりすみません」とだけ詫びて、小埜家を出た。