けど、攻撃も防御も、対象の説得も私が引き受けているこの状況が紅には歯がゆいらしい。

《巫女様、それならどうか、他にも式をおつけください。せめて巫女様をお守りする力のあるものを――》

言葉の途中の紅を抱き上げる。そのまま肩に乗せた。

「うーん、それでもいんだけど……今はまだ、紅と二人きりって、ダメ?」

私の言葉に、紅は一瞬声を詰まらせた。

《し、式に色目使ってどうするんですかっ。そういうことは旦那様に仰ってくださいっ》

色目って言われた。私は半眼になった。

紅は黎のことを『旦那様』と呼ぶ。確定らしい。

《今日だってハート満載なことになりそうだったから、紅、海雨様のところにいたんですよ。おかげで聞いてしまいましたが》