影は意を決したように喉をならした。

《――ごめん。………生きてくれて、ありがとう》

私が地に張っていた呪縛の紋様から光があふれだし、影を包んでいく。

また開いた扇を、平面にして影の方へ差し出した。

「少し、夜更かしし過ぎましたね。おやすみなさい。どうか、良い夢を」

バサッと大きな音を立てて、扇を下から天上に向かって大きく払う。

そこから生まれた風から数多(あまた)の花びらが舞い出て、光と共に影を包んで夜の帳に覆われ始めた空へ向かって消えて行く。

扇を閉じると、残っていた花びらと光も霧散(むさん)した。

「紅、お疲れさま」