怒っているようでは……ない? 触れる場所からは少しも離したくないというように、強さを感じる。

そして、触れ方は優しい。

何度交わしたかわからないくらい、思考の全部が黎に埋め尽くされた頃、唇を離した黎は私の肩に額を当てた。

「無理。日に一度も真紅に逢えないとか。真紅はそれを簡単に受け容れるとか」

「え……簡単じゃ、ないよ?」

「簡単だろ。さっき、すぐ肯いた」

「だって……学校のことでしょ? やらなきゃいけないことだよ。私の我儘で覆ることじゃない」

「覆らなくても。……いい、ごめん、何言ってんだろな」