茶道具を仕舞うための、心ばかりの戸棚の下の段に段ボールで即席の小屋を作って、タオルを何枚も重ねた上で三毛猫が喘鳴している。

「………」

私はその前に膝をついて、じっと三毛猫を見つめていた。

黙って、ただ見守っていた。

いつの間にか、涙が頬を伝っていた。

大変だよね。苦しいよね。辛いよね。……生命(いのち)が生まれるって、こんなに命がけなんだ。

「……大丈夫だよ。ひとりにしないから」

小さくささやいてそっと手を伸ばすと、三毛猫は重たそうな動作で頭をもたげて、私の指先に鼻で触れた。

「………?」

どうしてか、三毛猫が微笑(わら)ったように見えた。