陽華の吸血鬼➁【一人称修正ver.】【完】


「百合緋様? 真紅ちゃん?」

架くんは何も感じなかったようで、不思議そうにこちらを見る。

百合緋ちゃんは見鬼(けんき)だ。同じものが聞こえたのだろう。

「今の……社から?」

百合緋ちゃんが呟く。

黙って肯き、右足を半歩分、社へ近づけた。

《サレ、クリカエスナ、アカキタマシイ》

「――――」

今度ははっきりと聞こえた。百合緋ちゃんの肩がびくりと跳ねる。

百合緋ちゃんは視えたり聞こえたりする力しかない。

右手に、覚えたての刀印(とういん)を結ぶ。

《ココヨリ サレ アカキタマシイ ニノマイハ ユルサヌ》

唇を引き結んだ。

邪気(じゃき)はない。恐らく、白ちゃんが言った地神の声だろう。

――威嚇するような口ぶりだが、恐怖もしない。

……その忠告の意味、わかっていた。

心の中で、言葉を並べる。