陽華の吸血鬼➁【一人称修正ver.】【完】


「架王子?」

「すみません、その呼び方はやめてください、百合緋様」

……どっちもどっちでは?

そう思ったけど、空気が二人の間で流れているので言わないでおいた。

架くんが続ける。

「……徒人(ただびと)の俺には、真紅ちゃんや百合緋様のご不安は推し量れません。ですが、百合緋様には若君も白桜さんもおられます。大丈夫です、きっと。あの方たちは、絶対に百合緋様のお味方です」

架くんの凛とした、それでいて柔らかい言い方に、百合緋ちゃんは薄く開いていた唇を噛んだ。

「……差し出がましいことを申し上げました。ご不快に思われたら、申し訳ありま
せん」

謝る架くんだけど、百合緋ちゃんは首を横に振った。

「あり、がとう」