「架王子?」
「すみません、その呼び方はやめてください、百合緋様」
……どっちもどっちでは?
そう思ったけど、空気が二人の間で流れているので言わないでおいた。
架くんが続ける。
「……徒人(ただびと)の俺には、真紅ちゃんや百合緋様のご不安は推し量れません。ですが、百合緋様には若君も白桜さんもおられます。大丈夫です、きっと。あの方たちは、絶対に百合緋様のお味方です」
架くんの凛とした、それでいて柔らかい言い方に、百合緋ちゃんは薄く開いていた唇を噛んだ。
「……差し出がましいことを申し上げました。ご不快に思われたら、申し訳ありま
せん」
謝る架くんだけど、百合緋ちゃんは首を横に振った。
「あり、がとう」



