「百合緋ちゃん?」
私が首を傾げると、百合緋ちゃんは視線を斜め下へおろした。
「わたしはいつか……わたしじゃないものになる。今は『わたし』が表に出ているけど、中に居る『わたし』にいつか、乗っ取られる……。そんな気がして、怖い……」
右手で左ひじの辺りを摑んで、百合緋ちゃんは吐き出す。
私は目を細めた。
「だから………百合緋ちゃんは、白ちゃんと一緒にいるんだね」
百合緋ちゃんは少し間を置いてから、肯いた。
百合緋ちゃんは物忌(ものいみ)だと言う。
百合緋ちゃんの中にある存在(もの)は、祓ってはいけない類のもの。
だから、不測の事態に備えて白ちゃんが常に傍にいる。
当代二強と謳われる陰陽師の一翼が。
「……こわい、ですよね」
ぽつりと言ったのは、私ではなく架くんだった。



