「真紅ちゃんは……この前まで、普通の女の子だったでしょ? 家のこととか知らなかったって聞いた。それが急にこんな――陰陽師とか、いわゆる非日常みたいな世界に入ることになって、戸惑いとか、ないの?」
戸惑い。
即答する。
「ないかな。むしろ、だんだん自分になっていく感じがしてる」
「……自分になる?」
「うん。過去の転生とかは関係なしに、私が生まれてくるはずだった形になっていく。戻って行くって言ってもいいかな。違和感とかは、特になかった。視え始めても、それが当たり前だったんだ、って感覚だった」
私は、急に妖異の姿が視えるようになっても、恐怖心や違和感は持つことはなかった。
「だってそれが、私の『当たり前』だから」
私の返事を聞いて、百合緋ちゃんは唇を噛んだ。
「わたしは……怖い、んだ……」



