無炎さんは学校では、目立つにごった紅髪は黒く変えているけど、黒ちゃんとそっくりの容姿まではどうしようもない。
無炎さんも月御門の苗字を名乗っているけど、周囲には黒ちゃんとは親戚だと話してあるようだ。
「それで、真紅。どうだ?」
無炎さんからの手紙に目を落としていた私に、白ちゃんが再び呼びかける。
「うん――。やっぱりおかしい、と思う……」
私が不審に思ったのは、このだだっ広い斎陵学園の、風の流れだった。
「風? 白桜は気づかなかったの?」
百合緋ちゃんが白ちゃんを見上げる。白ちゃんは肩を竦めてみせた。
「俺の本質は『焔(ほのお)』だからな。本質が『風』である真紅には、一歩及ばないところがある」
陰陽師――そもそも人間には、本質というものがあると、最初に紅緒様から聞いた。



