俺が鬼人と吸血鬼の混血であるのに対して、黒藤は陰陽師と鬼の混血だ。
鬼人、ではなく、鬼。
人間の血の混じらない、純粋な妖異としての存在。
しかも無涯はその大将。鬼頭(きとう)と呼ばれる、鬼の頭領だった。
紅緒様との馴れ合……馴れ初めは知らんけど。
小路流の当主が鬼を伴侶とする。その当時のことは知らない。
けれど受け容れてくれる反応ばかりであったとも思えない。
現に、俺がそうだ。
前例から逸れる者は忌まれる。
だが、正直まだ自分の位置は黒藤よりマシだと思う。
真紅に言ったように、俺には架(弟)がいる。
家のことは任せられるし――周囲の大方も架の方が相応しいと判断している――、危険視されるような力もない。
その上今や、鬼性(きしょう)も失くした身だ。
………。
問題は、真紅の方だ。



