帰った家に灯りはなかった。

「……ママたち、まだ帰ってないね。あがってく時間、ある?」

「そりゃ、真紅を一人になんかしたら紅緒様に呪われる」

黎が茶化すので、そっと睨み上げた。

すると、「ごめんごめん」と私の頭に手を置いた。

「お二人が帰ってくるまで、いてもいいか?」

「うん。……そういえば、ちゃんと中に入ってもらったことなかったよね」

いつも紅緒様が玄関先で塩をまくから、黎が敷居をまたいだこともないかもしれない。

「お茶淹れるね。あがって」