紅緒様が冷えた声が聞こえた。

「差し出口を申し上げますが、俺は桜城とは縁を切った身です。今は、ただの小埜黎です」

続いて黎の声。

「さようでしょうが、お前の出自が桜城にあることに変わりはありません」

「………」

「………」

緊張した空気の中へ、私は駆け足で戻った。

「れ、黎~」

「真紅? どうした」

黎の視線がこちらに向かって来て、内心うめいた。

料理上手のママの手を借りたとはいえ、自分のスキルのなさには、自分で呆れるくらいだというのに……。