「…は?」
だいぶ時間が経ってから、
諒くんが一言だけ口からこぼした。
やだな。
気づいちゃったせいか、
自分がどんどん大胆になっていく気がする。
頬に触れていた手を少しずつずらし、
頬から首へ、首から肩へ…と
どんどん下に下げていく。
最終的に諒くんの右手にたどり着き、
ぎゅっと手を繫ぐ。
…恋人繋ぎで。
「咲雪…?」
完全に無表情で、無機質な表情。
対してわたしはすごく緩んだ表情をしてると思う。
きっと端から見たら
わたしが嫌がる諒くんに
無理やり手を繋いでいる状態に見えるはず。
でも、なんとなくだけど、
この表情の意味がわかる。
きっと諒くんは、
わたしの言動1つ1つを分析してるんだ。
サイコパスが持つ、
相手の感情を的確に掴むことのできる能力で。
真剣に読み取ろうとする結果、
表情にまで手を回せてない、そんなところだろう。



