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「じゃあ、あたし行くね」


これは永遠の別れじゃない。


分かってはいても、胸がぎゅっと締め付けられるように痛む。


「…これだけ言わせて」


ナオは、出逢ったときのように綺麗で透き通るような瞳であたしを見つめる。


「もし万が一、玲香が俺を殺さないといけない状況になったら、迷わず殺してほしい」


「…何言ってんの」


そんなのできるわけない。


あたしがナオを殺せるわけがない。


「俺が死ぬことによって玲香の命が助かるんなら、俺はそれで本望だから」


「…バカ。殺さないよ。じゃあ行くね…」


ナオと話せば話すほど出ていくのがツラくなる。


最後に触れるだけの優しいキスを交わし、あたしは家を出たのだった。