父親と母親は不仲で、別居中。


あたしもそんな喧嘩ばかりの家に居たくなくて家出。


そこで同じく家出人のナオと出逢ったんだ。


「琴吹組が何だって?」


…独り言のつもりで呟いたのに、ナオの耳にバッチリ届いてたみたい。


琴吹組と敵対する西条(さいじょう)組のナオに─。


「別に」


あたしとナオは、互いが対立する組の人間であることを知った上で付き合っている。


もしこのことが誰かにバレたら、間違いなくあたしたちは消されるだろう。


それでもあたしはナオを愛している。


命に代えてでも貫きたい愛があるんだ。


「玲香は俺に秘密ばっかり作るね」


寂しそうとは捉えがたいが、でも寂しそうに見える表情であたしを見つめるナオ。


ナオの感情が読めないのはいつものこと。