この世界の闇を見た気がした。


普段は優しくても、小さなきっかけ1つで豹変する。


「答えろ玲香」


手元にナイフや拳銃があれば殺されてるんじゃないかと思うほどの冷たさに、口が動かなくなる。


「やめねぇよなぁ?」


やっぱり貫田さんは闇の世界の住人なんだ。


そう思わせるような真っ黒い瞳をしていた。


「…やめない…けど…」


「〝けど〟?」


弱気な語尾に反応した貫田さんは、その手をあたしの顎から髪の毛へ動かす。


前髪をガッと引っ張られ、プチプチっと何本か抜ける感覚がした。


「…あたし…その…」


恐怖のあまり、上手く喋れない。


〝きっとあたしは宮瀬聖に勝てない〟


そう伝えたいだけなのに。