「……俺─」


ブブ…ブブ…ッ


宮瀬のスマホのバイブ音が鳴る。


チラッと見えた画面に表示されていたのは【兄貴】。


「…もしもし」


宮瀬がさっきついた嘘はその場しのぎでしかない。


…きっとバレた。


『今どこにいる?』


漏れてくる城田さんの声からは殺意のようなものが感じられた。


それを察知してか、宮瀬はあたしの腕を強く引き、慌てて裏道へ入る。


人通りも少なく、死角が多い。


この辺りは隠れるにはもってこいだ。


「ごめん兄貴。見失った。今探してる」


淡々と嘘を並べながら角を次々曲がってどんどん薄暗い方へと進んでいく宮瀬。


…嫌な予感がする。


こっちが隠れるにはもってこいの場所ということは向こうにとっても同じ。