「ナオー、今帰った」


「遅い。何時やと思ってんねん」


二人で暮らすには大きすぎる家のリビングで、ナオが不機嫌そうにテレビを見ていた。


「ごめんって。てか、別にそんな遅くないでしょ」


とは言ったものの時刻は午前2時過ぎ。


女子高生が帰ってくるにしては遅すぎるか。


「門限、12時やねんけど」


「あーはいはい」


ナオが関西弁になる時は怒ってるとき。


だけど今のあたしにはナオに構ってる余裕がない。


さっきまで会っていた貫田さんの言葉が脳裏に蘇り、芯からゾクゾクしてくる。


〝それでも殺るか?〟


その問いにあたしはすぐに答えられなかった。


殺し屋をやってる以上、命を失う危険と隣り合わせなのは当然のこと。


だけど、強敵となればそうなる可能性は格段に上がるわけで。


自身の復讐のためなら命を擲つ覚悟はできるかもしれないが、そうではない。