【わかった。じゃあどうにかしてボディーガードだけは付いてこさせないようにしといて。運転手のほうは一緒に拉致する】


…迫田さんさえ付いてこなければきっと上手くいく。


あたしが裏切ったとバレる可能性も少ないだろう。


【沙耶のこと間違っても殺したりしないでね。何があっても】


【それは約束できない。じゃ、このやり取り全部消しとけよ】


そのメッセージのあと、何を送っても既読が付くことはなかった。


〝約束できない〟


その一言だけで気持ちが一気に沈む。


それでももうやらないという選択肢、道はない。


やらなきゃいけない。


沙耶を拉致しなきゃいけない。


「…ごめんね沙耶…」


裏切ってごめん…。


あたしは…沙耶と友達になれるような人間じゃなかった。


あたしなんかに友達ができるわけがなかったんだ。


あたしはもう…琴吹組の人間じゃない─。