『ん』

返事があった。眠そうな返事。

「しば……松葉です」
『分かってる』
「さっき、五色くんと話がつきました」
『ん』
「という、報告です」

少し考える時間があった。わたしは言葉を待つ必要はないと思って、「じゃあ」と話した。

『ありがとう』

浅黄さんはそう言った。

『俺は君に自分の為にはっきりしたがらねえんだろと言ったけど、君がはっきりして欲しいのは俺の為だ』

その言葉を聞いていた。

『だから、ありがとう』

ああ、わたしはやっぱりこの人が好きなんだ。

ありがとうと言われるだけで、こんなにも、嬉しい。