圭吾が病室に一枚の紙を大事そうに抱えて現れたのは、退院日一週間前のことだった。

「恵、これ、恵のお父さんとお兄さんに保証人欄は書いてもらった」

差し出された紙は私が記入するだけになっていた婚姻届だった。

「退院したら一緒に住もう。
あそこに恵を一人で住まわせたくないんだ。

式は先になるけどもう二度と恵を手放したくないんだ。

退院日に入籍したいんだけど…

いいか?」

大きな手が、私の左手に重ねられた。

私の左手の薬指には、先日仮眠室でプロポーズされてはめられた指輪がおさまっている。

私の答えを待つ圭吾の瞳が不安げに揺れていて、そんな彼の表情に胸がきゅんとする。

いつだって私のことを考えて、私の気持ちを優先させてくれる優しい彼で、私の中は毎日圭吾でいっばいになっていく。