「滅茶苦茶いい女だろ?」

ステージが終わり今もなお、呆けて動きがとまっていた俺は木下に話しかけられて我に返った。

「しかも今日の゙MOMOちゃん"、お前を見つめて踊ってたし。知り合いか?」

「いいや、知らない。
…週末はいつもここで踊るのか?」

そんな質問をする俺を見て木下がニヤニヤする。

「金土の夜はいるはずだ。
彼女のダンサー名はMOMO。
あとはわからない。
声をかける男はたくさんいるが、大切な人がいるからと誰の誘いもお断り。
勿論今まで誰かを見つめたまま踊ったことはない。

店内のやつらにお前ずっと睨まれてるぜ。」

たしかに木下に言われて気がついたが、あちこちから鋭い視線が突き刺さる。

でも、いくら思い返しても知り合いに思い当たる人物はいない。

あれだけの見事なタトゥーだ。
今までに寝た女の中にも勿論覚えはない。

「まぁ、どうであれ、気に入ったならしばらく通いつめるんだな。

一元さんにさらわれたんじゃ常連客が納得しないからな。

それに…失恋の傷は新しい女だろ?」

「もったいないくらいいい女だ」

「おっ!
初っぱなから狼モードだな。」

「羊の王子キャラは職場だけだ。
…久々に素で攻めたい…」

ニヤリと笑い一気にグラスをあける。

新たな出会いは同じように突然で、俺ばMOMO "に一瞬で心を奪われた。