「俺、興味ないんで」

俺はチラリと左手にはめた指輪を先生に見せた。

「お前、結婚してるのか!?」

先生は目を見開いて薬指を凝視した。

「いえ、高校卒業してすぐ婚約して、結婚は三年後の予定です」

「晒名総合病院の跡取りだもんな。
許嫁がいてもおかしくないか。
大変だな」

「あー、違うんです。小さい頃からの幼馴染みがずっと好きで、高一でようやく付き合えて、本当はすぐにでも結婚したかったんですけど半人前だからダメだって親父に反対されて。
離したくないし、取られたくないんで婚約したんです」

そんな俺の話に先生がくつくつ笑う。

「あー、しかも虎太朗、彼女一筋で付き合って抱くまで五年、しかも女は彼女だけしか知らないっていうくそ真面目な彼女一筋なやつなんですよ」

湊の言葉に先生は肩を揺らして笑い出した。

「お前!その容姿でモテるだろ。
なんだよ、そのイケメンっぷりでド真面目な純情男かよ。
いいな、お前」

どうやら先生に気に入られたようだ。

本人は無意識なのか、気に入った相手は『お前』とか『おい』とか名字を呼び捨てで呼ぶのだ。

ついさっきまで俺は先生から『晒名先生』と呼ばれていたのだから。