「で、お前は何を悩んでるんだ?
抱けないことか?

それとも、彼女の中にいる男の存在が気になることか?

その両方なら別れちまえ!」

吐き捨てるように言われはっとして目の前の先生を凝視した。

先生は険しい顔をしていた。


「俺は、何人もいままで大切な人を亡くした家族をここで見てきた。
きっかけはどうであれ、医師であるお前に引かれ、前に踏み出そうとしてるんだろ?

支えてやれよ。
そばにいてやれ。
亡くした恋人を想う彼女ごと全部、まるごと包み込んで愛してやれ!」

あぁそうだ。
俺は何を悩んでいたんだろう。

「フッ。
やっぱりすごいな。

すっげー先生いい男ですね。」

「お前には好かれたくない…。
だいたい!!抱けないくらい我慢しろ。
俺は六年も手に入れるまでかかったんだ!
どれだけ黙って近くで見守ってたと思うんだよ」

この人とこんなに話すのははじめてだ。
佐久間や晒名が医師としても、人としても、男としても尊敬してやまない…そう話す意味が俺にもわかった。