「…で、相手はこの間うちに腹膜炎のオペで入院してた腹にタトゥーのコか？」

医局に備え付けられたコーヒーサーバーからコーヒーを落とすと、先生のデスクにカップを置いた。

「ありがとう」

カップに口をつけて一口含むと
「で？何を俺に聞きたいんだ？
女の口説きかたやホテルに連れ込むのは俺よりお前の方が得意だろ」

と嫌みたっぷりにいい放つ。

「闘病して亡くしたんだ、一生忘れることなんてできやしない。
ましてやお前と付き合えばなおさらだ。

俺たちは麻痺して感じなくなってるが、消毒薬の匂いが染み付いてる。

まぁまだ小児科医のお前はましなほうか。

この格好もそうだ。
嫌でも思い出す。
おまえ…似てるのか？」

頷く俺に先生がため息をつく。