そう。
きっと敏生が彼と引き合わせてくれたんだろう。

「なぁ、やっと会えたんだからこっち向いてよ。
退院したら健全なデートしよう。
水族館に夢の国、海だろ、映画にドライブ、旅行も行こう。

俺が必ず幸せにする。

好きなんだ、付き合ってよ」

病気は人を気弱にする。
甘く優しく囁く彼の言葉が胸に響く。

「私、我が儘だよ?」

「大丈夫。俺はもっと我が儘だ」

「女の子にいつも囲まれてるからたくさん、ヤキモチやくよ?」

「俺だってサライで踊るモモを見てる客に妬いてるよ!」

私の手を大きな温かな両手が包む。

「ずっと…そばにいてくれる?

もう一人になりたくない…」

「嫌だっていっても離さない!
俺は全部歩のものだ。
他には?」

「私も…渉が好き」

少したれ目の優しい目を細めて満面の笑みを浮かべる。

「やっとつかまえた」

「うん、つかまった」

クスクス笑うとお腹の傷がひきつれて痛み、顔をしかめると傷を見せろと慌てだしてパジャマをめくる勢いで制止するのが大変だった。