彼女の呼吸がだんだんと落ち着いてくる。

まさかこんなかたちで彼女に触れることになるとは思わなかった。

「もう、大丈夫そうだな。」

離れがたい彼女から腕をとき、安心させるように目を細めて優しく微笑むと、彼女の目が一瞬大きく見開かれ、瞳がゆれた。

すぐに俺から目を反らし、
「ありがとうございました」
と頭を下げた。

「付け入るみたいだけどお礼は食事がいいかな。
よければランチ」

「えっ…」

彼女が一瞬言葉につまる。

絶対に逃がさない!

「明日の昼間は?
ランチならいいだろ?
夜だと襲っちゃいそうだし。
昼間なら羊で俺いられるから」

肩をすくめておどけて笑うと
彼女がくすりと笑った。

「いいですよ。
坂口先生。昼間の先生は優しい王子様ですから。
11時半、ここで待ち合わせでいいですか?
今日はありがとう。
お休みなさい坂口先生。」

くるりと背を向けて遠ざかっていく後ろ姿を唖然として見つめる。

君は誰だ…?

昼間の俺を知っている…モモ、君はいったい誰なんだ…。