彼は持っていた紙袋をテーブルの上に置いた。

「これずっと先生から借りていたCDです。

進路に迷っていたときに、すごくいいバンドがいるから聞いてみろって渡されて。
俺、それから本気でプロ目指してようやくデビューできて。

先生が勧めてくれたblack mistとようやく同じステージにたてます」

彼はそこで言葉をきり、頭を下げた。

「見に来ていただけませんか?
先生のかわりに見てほしいんです。

俺がblack mistと同じステージに立てたら、必ず悠希さんと見に行ってファン一号になって応援してやるぞってそう言ってくれていて。
お願いします」

再び頭を下げた彼を、私は凍りついたまま黙って見つめ続けていた。