火照った顔が治まるのを待って店内にもどると、マスターや常連さんたちの視線が集まる。

うん、営業中だったね…

「イケメンな彼、やっぱりさくらちゃん目当てだったんだ」

「もちろんそうだろ。毎日、さくらちゃんのことチラチラ見てたもんな」

「ほんと、じれったいやつだよな。ようやく声をかけたか」

そんな声があちこちから飛んでくる…

「皆さんよく見てますね…」

目をパチパチさせて皆の観察力に驚いていると

「当たり前だよ。
俺たちはマスターの入れてくれるコーヒーと、さくらちゃんに会いたくて通ってるんだから」

「おっさんたちじゃさくらちゃんの恋人にはなれないからね。
しかし…
ミュージシャンのわりに今どきずいぶんと照れ屋で奥手な男だよな。」

「うんうん。
男らしくいけーっ!って説教してやりたいよ」

「で?
さくらちゃんは?
どう思って、、、野暮な質問か」

クスリと笑われた。

「さくらちゃんもいつも彼が来るとそわそわしてチラチラ盗み見てるもんな」

全員がうんうんと頷きながら笑う。

恥ずかしい…。

私ってそんな態度とってたんだ。

「さくらちゃん、おっさんたちにもかわらず笑顔むけて優しくしてくれよ?

マスターの笑顔じゃ元気もでないし癒されやしないからな」


「おいおい、そりゃないだろ。
さくらの笑顔分、次回から代金に課金するからな」

「スマイルゼロ円だろ、ふつう」

「さくらは特別だ」

店内に笑いがおこる。

マスターが私を見つめて優しく微笑む。

ずっと私を支えてきてくれたマスターの目は『良かったな』と語りかけていた。