最前列の真ん中で、楽しそうに身体を揺らすサクラさんの笑顔から俺は目が離せないでいた。

本当に彼女によく似ている。

彼女のほうがもう少しタレ目で歳も2、3コ若いだろうか。

暗い場内を見渡すが、やはり彼女の姿は見当たらないようだ。

いつのまにか静まり返った場内、修二さんはアコースティックギターにもちかえてマイクの前に立っていた。

「今から歌う曲は、ライブで今日はじめて披露する。
俺の大事な友人に捧げる歌だ。
曲名は〈さくら〉」

修二さん一人にライトかあてられ、静かなバラードを歌い始めた。

その曲は切なくて悲しいバラードで一番は女性目線で、会いたくてしかたがないのに会うことが叶わないという内容の歌詞で、二番は男性目線でいつまでもずっと彼女の幸せを願い遠くからずっと見守り続けるという歌詞だった。