真っ直ぐに俺を見つめるサクラさんと目が合った。

ふっと微笑んで俺も真っ直ぐに彼女を見つめかえす。

久しぶりに心から楽しめたステージだった。

ステージ上ではいつもクールにきめて、ベースをかきならす俺が、目を細めて笑っている姿に場内の女の子達のきゃーきゃー騒ぐ声が耳に届く。

そんな俺の姿に、メンバーすら驚いて、ギターの祥也や、ヴォーカル&ギターのマサキが挑発するように俺に向かい合いギターをかきならす。

二曲なんてあっという間で、俺たちのアツい時間は瞬く間に終わりを告げる。

「大翔ー！！」

演奏を終えて去っていく俺に、彼女は大声で名前を呼んで、振り向いた俺に大きく手を振って満面の笑みを向けていた。

被っていたハットを手に取り、彼女にむけて同じようにその手を高くかざした。　どよめく観客の声を聞きながら、俺は彼女と同じように、満面の笑顔を浮かべたままステージの袖に姿を消した。