先程、物販コーナーで祥也に紹介されたBlack mistのライブの常連客、゙サクラさん"は俺が毎朝通う近所のカフェの゙さくらちゃん"によく似ていた。

笑いかけられた笑顔は本当にさくらちゃんにそっくりで、ドキリとして思わず赤面してしまった。

薄暗い店内をぐるりと見回してみたが、彼女の姿など見当たらなかった。

Black mistのCD を手にしていた彼女に、いいバンドだとそれとなくすすめてみたのは先月のことだ。

自分も行くと伝えたライブだったが、俺が出るとは言えず、どうにもベースを手にしないと言いたいことも言えず、まっすぐに見つめることもできない自分のヘタレっぷりに毎回うんざりする。

少しはにかみながら、どこか寂しげに微笑む彼女、さくらちゃんのことが俺はずっと気になっている。

話しかけることはもちろん、アプローチすらできずにせっせと毎日お店に通いつめている状態だ。