一年に一度。私たちは、あの場所で。

ある秋のことだった。
私、綾香は慣れてきた学校生活に嫌気が差し
ていた。元から少し男の子が苦手で触れるだ
けでむしずがはしる。
子猫の鳴き声がする。水路のほうからだ。
「ほら、大丈夫だよ。おいで。」
男の子にしては小柄の色の白い子だった。初
めて触れてみたいと思った。
「あっ、逃げちゃった。」
目が合う。数秒。
「君は誰?」
そういう彼の顔は笑顔だったのにとても寂し
そうだった。
少しの間無言だった。
「僕は体が弱いんだ。だから、普段は外国で
治療をしてもらってる。だから、日本にいら
れるのは秋の一週間だけなんだ。」
「そっか。また、会える?」
「うん。また明日。この場所で。」
足早に去っていく彼の背中はなぜか遠い存在
に見えた。