夢を見た。幼い頃の記憶だ。椿を見ている。
「お主も椿が好きなのかえ?」
顔がぼやけて見えない。でも、懐かしい感じ
がする。
「うん」
「そうか。お主は陰陽師であろう?」
「うん」
「わらわが怖くはないのか?」
「うん」
「そうか。わらわはもう行く。元気でな。」
飛び去ってく彼女の服は椿の着物だった。

俺は、泣いていた。そうか、俺とあいつはず
っと前に一度会っていたんだ。
昨日の夜、椿姫の動きについて話されていた
。出会った人間を殺し、椿を口にいれて去っ
ていく。しかしその遺体は、目を奪われるほ
どに綺麗で穏やかな顔をしているらしい。俺
はそいつを滅するために旅をすることになっ
た。まだ少し寒い2月のことだった。