「あ、いや、オレこそ大きな声出してごめん」

 つい興奮してしまった。

 ハルは自分が普通だと思っている。だけど、この頭の良さはまったく普通じゃないと思う。
 大体、高校の授業って、自分で教科書読んだくらいで分かるもの? 違うよな?

 杜蔵は良家の子女が多く通うと言われるエスカレーター式の私立だけど、実は学力だって県下トップクラスだ。そこで、オレも真ん中よりは上にいた。と言うか、上位2~3割くらいっていう微妙な場所には入ってた。

 けど、そんな順位ではあったけど、実はオレ、中学生の頃から、かなり真面目に勉強してたんだ。ハルが休んだ時に、ちゃんと教えてあげられるように。……実際には、まるで必要なかったけど。それが分かった後からは、いつか、ハルが選ぶ学部に一緒に入れるようにって目標が変わったのは、ここだけの話。

 正直、ハルの第一希望が経営学部だと知った瞬間、オレはかなりドキッとしたんだ。

 ずっと昔にこの地域で成功した実業家が後進育成のため、地域のために創ったといううちの学校では、今でも経営者の子どもが多く通っていて、何だかんだでやはり経営学部は倍率が高い。で、経営学部は事前の進路相談で確認した時、何とか入れそうというラインだったんだ。ハルに好きなところを選ぶように言っておきながら、危ないところだった。

 この六年間、真面目に勉強してきて本当に良かった、って本気で思った。

「んー。まあ、つまり、……大学入っても、きっとハルは困らないよな」

「え…っと、それって、」

 ハルはオレが何を言いたいのか、まるで分からないという顔をする。

「うん。つまり、ハルは地頭が良いから、多少休んでも、きっと問題なく授業にはついていけるだろうなって」

 今までだって、あれだけ休んでもこの成績だ。大学だって、きっと何を選んでもハルは困らないだろう。