「え? なに?」

「ハルに、しっかり勉強しろとか、あり得ないでしょ! オレが言われるならまだしも」

「……なんで?」

「だって、ハル、身体のことさえなきゃ、医学部だってストレートでいけるでしょ!?」

 うちの大学には医学部はないけど、外部進学クラスへ行って医学部を受けるヤツは毎年何人もいる。明兄も正にそんな風に医学部へ行った。

「まさか」

「いや、絶対いける。大体、ハル、学校の勉強って予習しかしないじゃん?」

「え……うん」

「体調を崩した時に遅れないように、だっけ?」

「うん」

「で、復習してるとこなんて見たことないし」

「えっと……授業聞いたら、わかるし」

「でもって、自分での予習しかしてなくて授業受けてなくても、本当は困ってなかったよね?」

「……ノートはありがたく見せてもらってた、よ?」

 オレが取ってるノートをハルはいつも喜んで受け取ってくれていた。だけど、もしかしたら、今、学校でどこを勉強しているかを知る以外の役に立っていなかったんじゃないだろうか?

 ……って考えたら、なんか寂しいけど。

「だけど、ハル、テスト勉強もほとんどしてなかったでしょ?」

「まったくしなかった訳じゃ……」

「授業も受けてなくて、予習もできてなかったところしか、やってないイメージなんだけど」

 オレの言葉にハルが困ったように小首を傾げた。

「えっと……さすがに、テスト範囲の教科書読んだりはしたけど」

「それだけで、あの成績でしょ!?」

 ハルの成績はホント、学年トップクラスだ。大抵、一桁台。本当に体調さえ邪魔しなきゃ、トップ3には食い込むし、学年トップを取ったこともあったはずだ。

 体調が悪くて保健室で受けたような時だって、二十番より後ろなんて見たことないし、入院しているとか、当日にどうしても受けられずに追試になった時ですら、オレより悪かったことなんて一度もない。ちなみに、うちの学校は病気とか忌引きでの追試は取った点数の9割って決まっている。

「えっと…ね、でも、あれ以上は体調崩しそうで、夜更かしして特別な試験勉強とかはできなかっただけで、わざとしなかった訳じゃ……」

「だから! それであの成績ってのが、もう普通じゃないんだって!」

「ご……ごめん、ね?」

 思わず声を大きくすると、ハルは申し訳なさそうにオレを見上げた。