15年目の小さな試練

 そんな訳で、一限目も二限目も送り迎えをしてもらった。

 それだけでも申し訳ないのに、昼休み、なぜか晃太くんと晃太くんのお友だち、更にえみちゃんも一緒にご飯を食べることになっていた。
 わたしをお友だちさんに紹介すると晃太くんはご飯を買いに行ってしまった。

 えみちゃんはパンを買ってきてあると言い、お友だち……和田悠真さんは待ってる間に買って来ておいたとのことで、テーブルの上には豚カツ定食らしきものが置かれていた。

 晃太くんは「先に食べててね」と言いおいていったので、わたしもお弁当を取り出した。

 すると、えみちゃんが隣の席からわたしのお弁当箱を覗き込み、

「ハルちゃん、お弁当ちっさー。それで足りる?」

 と驚いたような声で言った。

 上尾えみちゃんは大学から一緒になった女の子。明るくてハキハキしてて、とても人なつっこい。肩の上でくるんとカールした髪は明るい茶色で、釣り目がちな目とくるくる変わる表情が妙に猫を連想させる。

「本当だね。ダイエット…じゃないよね?」

 和田さんは晃太くんと同じ大学院生だという。晃太くんに頼まれて、食堂の席を取っておいてくれた人。

「えっと、ダイエットはしてないです」

 和田さんに先に答えて、それから、えみちゃんの方を向いて

「これで、十分足りるよ?」

 と言う。

 どちらかと言うと、と言うか見るからにと言うか、悲しいことに自分が不健康なほどに痩せている自覚はある。

 決してダイエットの結果ではなく、小食で栄養が行き届いていないからであり、運動ができず筋肉がないからでもある。