翌朝になってもカナの熱は下がらなかった。

 本当に疲れがたまっていたのだと思う。

 結婚後すぐに、わたしは心臓の手術で3ヶ月くらい入院した。術後しばらくの間、そして心臓の状態が悪化した時は無理だったけど、いつもの病室にいる時はカナもずっと病院に泊まり込んでいた。その後の何度かの入院の時も、カナは必ず病室に泊まってくれている。

 病室にはテレビもお風呂もミニキッチンもあるけど、寝るのはソファベッドだし、定期的に看護師さんやお医者さんが入室する。あんなところに長期間寝泊まりするのは、相当負担だったはずだ。

 いつだって、自分の事は後回しで、わたしの事ばかり考えているカナ。

 申し訳なくて仕方ない。胃の辺りがズンと重くなる。
 しかも、カナは高熱が下がらない状態なのに、相変わらず、わたしの事ばっかり気にしている。

 カナが頼み込んだみたいで、今日から一週間、晃太くんが登下校に付き合ってくれるという。
 あり得ないと断りたかったのに、当日の朝言われたのじゃ、晃太くんに断りの連絡をする時間すら取れなかった。

 だから晃太くんに会ったら、ちゃんと自分一人で大丈夫だと伝えないと……。

 そう思っていたのに、晃太くんの笑顔は優しくて、行きの車で送迎なんかはいらないよと話すはずが、聞かれるままに質問に答えている間に大学に着いてしまい、話しそびれてしまった。