「おはよう、ハルちゃん」

「晃太くん、おはよう。ごめんね。わざわざ来てもらっちゃって」

 迎えに行くと……と言うか、ハルちゃんの車に同乗しに行くと、開口一番、実に申し訳なさそうにハルちゃんは謝った。

「大丈夫。気にしなくていいよ」

 笑顔で返すが、ハルちゃんの表情は晴れないままだ。

「でも、晃太くんは朝から授業がある訳じゃないでしょ?」

 よく知ってるな。今日は二限目からだ。

「大丈夫。行けば行ったでやることあるからね」

 車の前でいつまでも突っ立っていても仕方ない。

「とにかく行こうか?」

 ドアは運転手さんが開けてくれる。
 俺はハルちゃんの荷物を預かり、運転手さんに会釈しハルちゃんの背中を軽く押し乗車を促す。自分はハルちゃんが乗った後に、反対側のドアから隣の席へ乗った。

 思えば、こう言うシチュエーションは珍しい。同じ車に乗るのすら、随分と久し振りな気がする。

 静かに車が発進するのに合わせて、ハルちゃんに声をかける。

「大学はどう?」

「ん。とっても楽しいよ」

 ハルちゃんはにこりと笑った。

「課題とかレポートとか大変じゃない?」

「うん。たくさん出るからビックリしちゃった」

「それでも楽しい?」

「えっとね……新しい事を知ることができるのは、楽しいと思うの」

 ハルちゃんは、真顔でしばらく考えた後、本当に嬉しそうに笑った。

「課題も一つこなす毎に、自分がね、ほんの少しだけどね、本当にほんの少しだけ、何だか成長した気がして、それがとても嬉しいの」

 ふわっと笑顔を浮かべながら嬉しそうに手を合わせて語るハルちゃんは相変わらず、仕草も表情も文句なしに可愛かった。