「今日の時間割、さっき送った通りだからね?」

 けど、大学院生の俺に一年の授業にまで一緒に出ろと言うのはどうだろう? まあそれは断ったけど。

「俺にだって、都合っつーもんがあるんだけど」

「今週だけ! 今週だけだから! お願い! 来週にはさすがに復活してるはずだから!」

 弟は熱く語る。そんなに興奮して、熱が更に上がらないか心配になるくらいだ。

「まあ。できるだけはするけど、できるだけしかできないぞ」

 大体、心配なのは分かるけど、ハルちゃんだってここまで来たら重いんじゃないだろうか?
 本当に体調に問題があるなら、そもそも大学へは進学していないだろう。おじさんやおばさんが許可してるんだから、通えるくらいの体力はあるんだよな?

 と思いつつ、もしかして叶太のこの重すぎる愛が加味されて通学できている可能性に思い至る。

 ……もしかして俺の責任、かなり重大かも?

「とにかくお願いね?」

「はいはい」

「じゃあ、ハルには連絡してあるから、牧村の車に乗ってってね」

 おい叶太、それは聞いてないぞ。

「俺の車でいいだろ?」

 わざわざ、よその家の運転手さんの手を煩わせるのは気が進まないでしょ。

「ダメダメ。途中でハルの具合が悪くなったら困るだろ?」

 大学までは、車で10分かからないし、ハルちゃんだって通い慣れた道だ。
 けど、真顔の叶太を見ていたら、言い返すのが申し訳なくなった。と言うか、言い合っている間に出かける時間が来てしまう。叶太が簡単に譲るとも思えないし。

「はいはい。了解」

 どっちにしろ、ハルちゃんが叶太と使う予定だったんだから、叶太が俺になっても、あちらは何ともないしね。それより、早い動きができないハルちゃんと行動するのに、出発が遅れる方が問題だ。

「ありがとう! 何かあったら電話してね?」

「ああ。ハルちゃんは確かに頼まれたから、お前はしっかり栄養と睡眠取って早く熱下げろ」

 どんなに元気だって主張しても、インフルエンザって、熱が下がって何日目からしか登校できないんだったよな?


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