……カナが試合に出なくなったのって、やっぱり、わたしのせいなのかな?

 中1の冬にカナがバスケ部を止めたのはわたしのせいだと聞いた時にも同じようなことを考えた。
 だけど、今ではそれはカナの選択でしかないと分かっている。カナには好きな道を選ぶ権利があって、ちゃんと考えた上で選んだ道なのだと分かっている。

 でも、分かっているからといって、改めて気付いた事実はそう簡単に割り切れるものでもないんだ。

 だから、わたし、表情が曇ってたのかな?
 カナが少し困ったような顔をして、わたしをそっと抱き寄せた。

「えーっと、ごめん。俺、なんかまずいこと言ったかも?」

 斜め上から、谷村くんの声が降ってくる。

「いや、大丈夫」

 カナはわたしの頭を優しくなでながら、谷村くんに応える。
 でも、大丈夫と言いながら、カナ、本当はぜんぜん大丈夫と思ってないよね?

 気遣うようにわたしに触れる手が、カナの気持ちを伝えてくるんだ。
 手のひらでカナを押し戻すようにして、その腕の中から抜け出そうとすると、カナは止めることなく腕の力を緩めてくれた。

「あのね、カナ、わたし、大丈夫だから」

 カナを見上げてそう言うと、カナは心配でたまらないという表情を隠すことなく、わたしの頬に手を伸ばす。

「……ハルは、見たかった?」

「えっと、本当のところ、よく分からないのだけど。でも、一度ちゃんと見てみたい、かも」

 正直にそう答えると、カナはまた困ったような顔をした。

「なんでダメなの?」

 谷村くんが首を傾げてカナとわたしの顔を交互に見た。

「多分、…昔、カナの試合を見に行って、驚いて具合を悪くしたことがあって。だから、カナは心配しているんだと思う」

 カナが言いにくそうにしていたから、わたしが代わりに答えてしまった。