15年目の小さな試練

「……ん? これ」

 テーブルの上に置かれた封筒には以前、どっかで見た覚えがある探偵事務所の名前が印刷されている。

 一体、いつの間に?

 封筒に手を伸ばすと、オレが中を見る前に、明兄は叩いて出たらしいホコリについて話し始めた。

「事務員の女性、大学院生が数名、メンタル病んで退職に追い込まれたり、退学してたりするぞ。いずれも顔やスタイルのいいリア充の若い女性」

「……え?」

 思わず身を乗り出すと、明兄は

「打たれ弱いヤツも中にはいたかも知れないけどな」

 と言って、肩をすくめる。

「陽菜があそこまで頑張ったくらいだし?」

「……確かに」

 本気のメンタルを攻撃が、あれくらいで済むわけはない。

 ハルがされたのは、パワハラ一歩手前の嫌がらせレベルだった。
 普通ならやり切れない無理難題だったとは言え、ハルにはこなせる内容だった。嫌味は言われていたけど、素直で人を疑うことをしないハルにはあまり通じていなかった。

「まあ、寄付金とか、一応気にかけて陽菜には手加減してたって可能性もないではないけど?」

「……うん、そうかも」

 相づちうちながら、思わずため息。

 自分の甘さがイヤになる。

 一歩間違えば、ハルだって退学に追い込まれるくらいのひどい目に遭わされていたかもしれない。

 相手がそこまでする人間だったとしたら、オレはもっと早くに手を打たなきゃいけなかったんだろう。