出された課題を一生懸命解いた。だけど、頑張れば頑張るほど、山野先生との距離は開いていく気がしていた。
自分は何を求められているのだろう? 仮に失敗を求められているのだとしても、わざと間違えるなんてできるはずもなくて……。
先生は表面上はいつもほめてくれたから。だから、更にどうすればいいのか分からなくなった。
この数ヶ月間で、いつの間にか心の奥が凍りついていた事に今更気付く。
それが久保田先生の言葉で静かに溶けはじめていた。
頑張ったことをただ誉められただけ、暖かな言葉をかけてもらっただけなのに……。
自分がしたことを認められるというのは、どうしてこんな心を満たすのだろう?
「……ごめ…なさ」
止まらない涙で息が荒れる。
言葉にならないなら、せめてと笑顔を浮かべて、わたしはゆっくりと頭を下げた。
心からの感謝の気持ちを込めて。
顔を上げると、久保田教授がきれいにアイロンを当てたハンカチで、わたしの涙を拭ってくれた。
そして、にこりと笑う。
「来年、待ってますよ」
「はい」
わたしの答えに満足そうにうなずくと、久保田教授はカナに目を向けた。
「旦那さんの方は、もう少し頑張ってね。私のゼミは倍率が高いよ」
面白そうに笑いながら、教授はポンポンとカナの肩を叩く。
「はい! 精進します!」
カナが瞬時に姿勢を正し真顔で返事をする。
それを見た晃太くんが、クスッと笑いをこぼした。
☆ ☆ ☆
自分は何を求められているのだろう? 仮に失敗を求められているのだとしても、わざと間違えるなんてできるはずもなくて……。
先生は表面上はいつもほめてくれたから。だから、更にどうすればいいのか分からなくなった。
この数ヶ月間で、いつの間にか心の奥が凍りついていた事に今更気付く。
それが久保田先生の言葉で静かに溶けはじめていた。
頑張ったことをただ誉められただけ、暖かな言葉をかけてもらっただけなのに……。
自分がしたことを認められるというのは、どうしてこんな心を満たすのだろう?
「……ごめ…なさ」
止まらない涙で息が荒れる。
言葉にならないなら、せめてと笑顔を浮かべて、わたしはゆっくりと頭を下げた。
心からの感謝の気持ちを込めて。
顔を上げると、久保田教授がきれいにアイロンを当てたハンカチで、わたしの涙を拭ってくれた。
そして、にこりと笑う。
「来年、待ってますよ」
「はい」
わたしの答えに満足そうにうなずくと、久保田教授はカナに目を向けた。
「旦那さんの方は、もう少し頑張ってね。私のゼミは倍率が高いよ」
面白そうに笑いながら、教授はポンポンとカナの肩を叩く。
「はい! 精進します!」
カナが瞬時に姿勢を正し真顔で返事をする。
それを見た晃太くんが、クスッと笑いをこぼした。
☆ ☆ ☆



