「な……にを?」

 事の次第が徐々に理解できて来たのか、山野先生の顔色が一気に蒼白になった。

 叶太がせめて音声を聞かせろというので、山野先生の部屋に入る前にスマホをつないだ。近くにいたいと言うので、廊下で待たせるのもなんだからと久保田教授の研究室で待たせてもらえるように頼んだ。

 教授の部屋で待ちながら、イヤホンで音声を聞くという話だったけど、何をどうしたか、叶太は久保田教授に話したらしい。そして、二人で一緒にハルちゃんと山野先生の話を聞いていた、と。

「あなたが、牧村さんを罵倒していたところも聞きました。全部、最初から聞いていたんです」

 教授は深い深いため息を吐いた。

「久保田先生!? ……え!? まさか、……広瀬くん!」

 山野先生が驚愕の表情で俺に視線を向けた。

 今更隠してもどうにもならない。俺は自分の胸ポケットからスマートホンを出して机に置く。ガサリッと耳障りな音が、久保田教授の持つスマートホンから聞こえてきた。

「あなた、何てことをしてくれるの!」

「やめなさい」

 掴みかからんばかりの怒りを見せる山野先生を、久保田教授が制止する。

「話は全て聞きました。あなたが牧村さんに出していた課題も、すべて見せてもらいました。あそこまで難しい、教えてもいない内容の課題を出しておいて、できなかったら単位を落とすと脅すとは……」

「久保田先生! 違うんです!」

「学部長として、来週一週間、自宅謹慎を申し渡します。

講義は全て休講。あなたの進退については、謹慎期間中に学内で相談し、追って連絡します」

「久保田先生!」