15年目の小さな試練

「例えば? そんなに聞きたければ教えてあげるわよ!」

 吐き捨てるようなセリフの後、先生は不機嫌を全面に押し出した声で続けた。

「事務局から、特別な配慮を頼むと言われるから、どんな病弱な子が入って来るかと思ったら、ブランド物に身を包んだお嬢さまで? なんと高校生で学生結婚していて、夫からは溺愛されていて?

 配慮、配慮。あんまりうるさいから調べてみたら、多額の寄付金ですってね。

 寄付金の出どころを調べてみたら、夫の家と同い年の夫から? ふざけんなって感じよね。大学を何だと思ってるの? 楽して通いたいなら、うちじゃなくて、もっとレベルの低いところを選びなさいよ。

 で、腹が立って入学時の成績を調べたら付属の高等部からの進学で? 高等部の成績はトップクラスで、入試も学部で一番の成績。配慮、配慮って、どこに配慮なんて必要なのよ。ズルをする必要なんて、どこにもないじゃない!

 課題を出せば、どこに配慮が必要なのか分からないくらい完ぺきな回答を出してくるし、試しに、他の子より難しい課題を出したら、それにもまた馬鹿みたいに完ぺきな回答を出してくるし。

 三年や四年で習うような内容すら、あなた、完ぺきに理解しているじゃない? 理解、なんて生易しいもんじゃないわよね。あなた、私の授業を受ける必要って、ある? きっと、ないわよね?」

 先生は一気にここまで言うと、フウッと大きく息を吐いた。